窃盗や詐欺には共感できない。
学生時代に友人から譲ってもらったばかりのオフロードバイクを大学構内で盗まれたり、ローマ空港でスーツケースから物品を抜き取られたりした。その事由自体が悲しいこともあるが、その後しばらくは人間不信に陥ることも辛い。
だから、ギャングやスリが主人公のストーリーは感情移入ができないし、悪党を正当化しようとする内容には嫌悪感を感じる。
「掏摸(中村文則著)」も、その手のストーリーだろうという先入観があり、全体を通じて楽しめなかった。登場人物の殆どが悪党。また、不幸な子供が登場する点も個人的には好きになれない。裏社会の話であれば、不幸な大人だけがもっと不幸になる話で良い。
スリを生業とする主人公のハッピーエンディングとならなかった点は良かったが、救われない気持ちになる。
The Thief (UNABRIDGED)
by Fuminori Nakamura
Regular Price:$13.96
LENGTH:4 hrs and 1 min
audible.comに掲載されている日本の小説は純文学の比率が多い。大衆小説(山崎豊子氏や宮部みゆき氏の作品)も是非とも掲載してほしい。
純文学度 ★★★★
伏線が回収されない度 ★★★
Once a knave, always a knave度 ★★★★
コメント
許し難い行為を小説にしちゃう。
どうもそういう印象を中村さんの作品に持ってしまっているのですが、
どうやらそれを打破すべく(?)、新作『迷宮』では、ちょっと恋を
入れているみたいです。
だけど、これではまだ中途半端、そんなきびしい事を書いてるサイトも
あるんですね。
http://www.birthday-energy.co.jp
「掏摸(すり)」は、仰っているとおり看過できないですね。
まぁバッドエンドで良かったと思います。
そこが作者の良心?、それとも当然の帰結、なのでしょう。